冬の終わり

今年はオリオン座を見ていない気がする。

大人になってから冬が好きになった。
マフラーを巻くのも好きだし、
白い息が出るのを見るのも好きだし、
なにより冬の大三角を見るのが好きだ。

きっとベトナムでも、
今まさにこうやってMacに向かっているこの瞬間も、
オリオン座は空に上がっているのだけれども
見つからない気がするのだ。
探すのを辞めてしまったのかもしれない。

そんなことを考えながら過ごす
ベトナムの夜は明日で最後だ。
明日の深夜便に乗って日本へ帰る。
張り切って海外に来たはいいものの、
力不足で日本へ逃げ帰る。
この間たったの五ヶ月。

得たものは少なく、
失ったものはあまりない。
この時間は何のためにあったのだろう。
自分で色々悩んだこの時間はきっとこれからも
冬の空を見たら思い出すのだろう。
悔しさと、たぶん身が焼けるような後悔と。

別に喝采を浴びたいわけではないし、
永遠に続く安寧を欲しているわけではない。
こんな中途半端な自分が、
この先もちゃんと生きていけるのだろうか。
ちゃんと足元は見えているのだろうか。

「仕事を辞めたいです」と人事部長に電話したときに、
「決断するよりももっと早く相談してくれたら良かったのに」と言われた。
なんとなく自分のことは自分でわかるし、
相談して説得されて続くような状態ならそれは単なる構ってちゃんだ。
そう思ったので相談しなかった。
でも正解だったのだろうか。

決して後悔しているわけではなく、
もしも、を想像してみるだけ。
まだ頑張れたか？
まだ粘れたか？

あぁ、昔より目を閉じて
考えることが多くなったのかもしれない。

そりゃ空の星も見えないわけだ。